MediaTek は今秋発売予定の Googlebook 向けチップとして、長年 Chromebook を支えてきた Kompanio ではなく、スマートフォン向けに合わせた「Dimensity CX」を採用することを発表しました。
Chromebook で実績のある Kompanio ではなく Dimensity が選ばれた理由について、MediaTek が同時期に発表したブランド再編戦略とあわせて解説します。
Kompanio から Dimensity へ
MediaTek が Googlebook 向けチップとして発表したのは、従来 Chromebook 向けに長く使われてきた Kompanio ブランドではなく、主にスマートフォン向けとして展開されている Dimensity ブランドです。ただし、発表時点ではブランド名のみであり、チップの設計自体が Kompanio と異なるものかどうかは明らかにされていません。

MediaTek によると、Googlebook 向けチップに Dimensity が選ばれた理由として、Googlebook は Android OS をベースに構築されており、スマートフォン向けですでに世界中の数十億台のデバイスを支えてきた Dimensity プロセッサとの相性が良いためとしています。
また、採用されるチップは Googlebook 向けに最適化されており、高いパフォーマンスとハードウェアレベルの高度な AI 処理、スマートフォンとのシームレスな連携を実現すると述べています。
「One MediaTek」戦略とブランドの再編
Dimensity ブランドが Googlebook 向けに採用された背景には、MediaTek が 2026 年 4 月に発表した「One MediaTek」というブランド戦略があります。
MediaTek はこれまで、Dimensity、Kompanio、Genio、Pentonic、Helio、Filogic といった製品ラインごとに個別のブランドを展開してきましたが、より統一感のあるブランド体系が必要になったと MediaTek は説明しています。
この再編により、コンシューマー向けの名称は Dimensity に一本化される方針が示され、Helio、Kompanio、Genio、Filogic といった既存ブランドは、製品系列の語彙やスペックシート上の型番識別子としては残るものの、MediaTek がファミリーブランドとして前面に出すことはなくなるとされています。
Dimensity ブランドには、用途別に複数のサブブランドが設けられ、スマートフォン向けはこれまで通り Dimensity、パーソナルコンピューティング向けは Dimensity CX (Compute Experience)、車載向けは Dimensity AX という 3 つになります。
Googlebook 向けに採用された Dimensity CX は、Googlebook のためだけに新設されたブランドではなく、この再編の中でパーソナルコンピューティング領域全体に与えられた名称です。
なお、Kompanio ブランド自体は Chromebook 向けとして引き続き使われると見られ、Googlebook 向けの Dimensity CX とは共存することになります。
Dimensity CX は新チップか、ブランドの切り替えか
現時点では、Dimensity CX が新設計の新しいチップなのか、それとも既存の Dimensity あるいは Kompanio の名称を置き換えたものなのかは明らかになっていません。
この点を考える上で参考になるのが、Lenovo が開発を進めているとされる新しいタブレットモデル「Sapphire」です。Kompanio Ultra を採用する基盤で開発が進められており、当初は Chromebook Plus になると予想されていましたが、開発状況などから Googlebook の 1 つとしてリリースされる可能性があります。
Sapphire が Googlebook であるとすれば、搭載されている Kompanio Ultra は Dimensity CX としてリリースされる可能性も考えられます。これは MediaTek の新戦略では Kompanio という名称自体はスペックシートの製品識別子として存続するとされていることからも示されていますが、現状では Sapphire が Kompanio Ultra のまま投入されるのか、Dimensity CX に切り替わるのかは不明です。
ローカル AI 処理への注力という設計思想
MediaTek によれば、Dimensity CX は高性能な内蔵 NPU により、生成 AI のワークロードをデバイス上で完結させられるとしており、応答性や信頼性に加えて、データがローカルに留まることによるプライバシーやセキュリティ面の利点も得られるとしています。
クラウドへの依存を減らし、低遅延のローカル AI を実現しながら、終日使用できる電力効率を両立させることが、Dimensity CX の設計思想として示されています。
MediaTek の NPU は Google の LiteRT と連携しており、Gemma などのモデルをデバイス上で高速に動作させる取り組みが進められています。
まとめ
Chromebook が Kompanio という、効率性とバッテリー持続時間を重視したブランドで支えられてきたのに対し、Googlebook はスマートフォン向けの Dimensity から派生した新しいブランドを採用しました。
これは Google が Googlebook を Chromebook の延長ではなく、Android をベースにした新しいプレミアムカテゴリーとして位置づけていることとも重なります。
Dimensity CX が独自設計のチップなのか、ブランドの切り替えなのかは、今後の正式発売までに明らかにされるはずです。
なお、MediaTek 以外にも Intel と Qualcomm も最初のチップセットベンダーとして発表されています。